ニュースをパラパラと見ていると気になる見出しが飛び込んできました。
記憶に新しい2021年2月に起こった「大分時速194キロ死亡事故」
時速194キロで車を運転していた男性に対して、大分地検が”過失運転致死罪”で起訴したことについて。
まずは事故事件の詳細から
去年2月、大分市里の交差点で当時19歳だった男性が運転する車が、対向車線から右折してきた車と衝突。
この事故で、右折した車を運転していた大分市坂ノ市南の50歳男性が車の外に放り出され死亡しました。
警察は、男性を危険運転致死の疑いで書類送検しましたが、大分地検は今年7月、法定刑が軽い過失運転致死の罪で起訴。
起訴状によると男性は時速およそ194キロで運転していたとされています。また、犯人の証言では「何キロまで出るか試したかった」などと話していたそうです。
“危険運転“ではなく“過失運転“
物凄く簡単に説明しますと。。。
「故意ではなく、不注意だ」
という事になります。
似たようなニュアンスですが、異なる罪状になります。
一つ一つ見てみましょう。
過失運転致死傷罪とは
車を運転する上で必要な注意を怠り、人に怪我を負わせてしまう、または死亡させる犯罪です。
故意に起こしたのではなく不注意であり、加害者の行為と死傷に因果関係がある場合に成立します。
必要な注意を怠った場合というのは、結果の発生を予測して回避できたはずの事故を回避しなかった場合を指します。
前方不注意、脇見運転、一時不停止などが該当します。
危険運転致傷罪とは
正常な運転が困難な状態で自動車を運転し、人に怪我を負わせてしまう、または死亡させる犯罪です。
では、危険運転とはどのレベルなのでしょう。
自動車運転処罰法第2条では、以下の6つの行為が危険運転にあたるとしています。
- 飲酒や薬物の影響で正常な運転が困難な状態で走行させる
- 制御不能な高速度で走行させる
- 運転技能が未熟な状態で走行させる
- 人や他の車の通行を妨害する目的で割り込みや急接近をし、重大な交通の危険を生じさせる速度で走行させる
- 赤信号を殊更に無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で走行させる
- 通行禁止道路へ進入し、重大な交通の危険を生じさせる速度で走行させる
危険運転と過失運転の違い
冒頭でも書きましたが
過失運転致死傷罪は「不注意」
であるのに対して
危険運転致傷罪は「自分の運転行為が危険であるとの認識(つまり、故意)があるかどうか」
が一番の違いになります。
今回の事件について
※画像はイメージです。
今回の事故は右折しようとしてきた車と直進車との衝突事故になります。
事故時刻は午後11時頃だそうです。
夜ですから、ライトは必ずついていたので、右折しようとした車が直進車両に気づかないという事はないと思います。
僕も毎日車を運転しますし、仕事が遅い時は夜に運転することももちろんあります。
夜間の運転中はライトが必ずついていますから、車の距離は感覚的にわかります。
もちろん、「これだけの距離が開いているなら大丈夫だろう」という感覚ももちろんわかるわけで、無理に車間距離の狭いところを割って曲がろうなんて思うはずがありません。(誰だって事故はしたくないですから。)
ですが、対向車両の速度が194キロともなると、1秒間に進む距離は約54mになります。
対向車両が100m先に見えていたとしても、約2秒足らずで衝突します。
もし、200mの距離が開いていたとしても約4秒で衝突します。
一般道路の平均として時速50㎞で走行していたと仮定する*1と、100mの距離を移動するのに、約7秒掛かります。
こう考えてみると、対向車との距離が100mも開いていたとすれば右折可能だと考えます。※もちろん状況にもよりますので、計算上ということになります。
ですが、これが時速194キロで突っ込んでくるとなると曲がろうとアクセルを軽く踏んだ時点で衝突することが考えられます。
「危険運転ではない」と判断した大分地検
話を戻しますと、平均制限速度が50㎞とした場合に於いて、その約4倍のスピードで走行していたことに対して「危険運転ではない」という判断を下したことに疑問を持ちます。
ましてや、警察側は「危険運転致死の疑いで書類送検」しているにも関わらず、大分地検は「過失運転致死の罪」で起訴。
これにはどうも納得がいきません。
危険運転致傷罪で6つの行為が危険運転にあたると書きましたが、”2・制御不能な高速度で走行させる”に該当するのではと思います。
プロのレーサーでもない限り、194キロで走行している車を制御できるとは到底思えません。
もちろん、プロレーサーであっても、対向車両はいないという事や、必要最低限の安全は担保されているはずなので。
そうではなく、様々な車が行き来する場所であり、歩行者や自転車が横断する可能性だってあります。
これもまた計算上にはなりますが、時速194㎞で走行している車が停車するために必要な距離は約250m必要になります。これは危険などに気づいてブレーキをかけ始めてからという事になりますから、もう少し伸びる可能性は十分にあります。
運転される方でしたらお分かりいただけるかと思いますが、250m先の危険を察知することができるでしょうか。
僕には自信がありません。
被害者の遺族の方がこう仰っていました。
「あまりにも間違っていると思う。加害者だけが守られて被害者はこうやってずっと苦しむのか」
全くその通りだと思います。
なぜ、加害者は減刑扱いなのか。
本当に理解ができません。
遺族側は、適用する罪を変える訴因変更を求める書類を大分地検に提出し、今後福岡高検や最高検への提出も検討しているとのことです。
車の運転には十分注意しましょう
車を運転される方は多いと思います。
車はとても便利な乗り物です。複数で楽しく移動することもできますし、一人で気分転換することもできます。
そんな便利な乗り物でありながら”凶器”だという事を再認識し、安全運転を心がけていきましょう。
ちょっとしたことが大きな事故につながる可能性も十分にありますからね。
もちろん、自分が事故を起こさなかったとしてももらい事故ということもありますから。
安全運転で楽しいカーライフを満喫しましょう。
*1:原則的に一般道路は40㎞ですが、一部60㎞の道路もあることを考慮して間の50㎞としています。